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ISO9001取得で変わった品質管理と社内意識|P総合電設株式会社様

ISO9001取得で変わった品質管理と社内意識|P総合電設株式会社様

導入前の課題

P総合電設株式会社様(従業員35名・福岡県)は、公共施設・商業施設・マンションの電気設備工事を幅広く手掛ける会社です。品質管理に以下の課題を抱えていました。

  • 品質管理の方法が現場監督によってバラバラで、統一されたルールがなかった
  • 施工品質に対するクレームが年に5〜6件発生し、手直し工事のコストが嵩んでいた
  • 公共工事の工事成績評定で、品質に関する項目の点数が伸び悩んでいた
  • 大手ゼネコンの協力会社として指名されるためには、ISO認証が事実上の条件になっていた
  • 社員の品質意識が低く、「検査さえ通ればいい」という風潮があった

「品質のクレームが来るたびに、手直しに行って、お客さんに謝って。その繰り返しでした。根本的に品質管理の仕組みを変えないと、この先やっていけないと思いました。」

— P総合電設株式会社 代表取締役 藤井様

検討時に比較した認証規格

ISO9001の取得を決定する前に、藤井社長は他の認証も並行して検討しました。電気工事業として実利のある主要規格は以下のとおりです。

規格内容取得目安費用電気工事業での効果
ISO9001品質マネジメント200〜400万円公共工事の経審加点・大手指名
ISO14001環境マネジメント200〜400万円公共工事の経審加点・環境配慮提案力
ISO45001労働安全衛生250〜450万円安全管理体制の客観的証明
JISQ9001国内版品質規格ISO9001と同程度ISO9001と同等の評価
Pマーク個人情報保護100〜200万円設計図書・顧客情報管理

P総合電設様の場合、最も即効性のある経審加点と大手ゼネコンからの指名条件を満たすため、まずISO9001を優先することにしました。

「最初は3つ同時取得も考えましたが、コンサルタントから『一つでも維持するのは大変。まずISO9001で運用を回せるようになってから次を考えなさい』と助言され、段階的取得に切り替えました。」

— P総合電設株式会社 代表取締役 藤井様

導入/改善の経緯

ISO9001(品質マネジメントシステム) の認証取得に取り組みました。外部コンサルタントの支援を受けながら、約10ヶ月で認証を取得しています。

取得までのスケジュール

時期内容
1〜2ヶ月目外部コンサルタントを選定。現状の品質管理体制を分析
3〜4ヶ月目品質マニュアル・手順書を作成。品質目標を設定
5〜6ヶ月目全社員への研修を実施。新しい品質管理ルールの運用を開始
7〜8ヶ月目内部監査を実施。不適合事項を是正
9ヶ月目外部審査(ステージ1審査)
10ヶ月目外部審査(ステージ2審査)。認証取得

取得にかかったコスト

項目概算コスト
コンサルタント費用約150万円
審査費用(初回)約50万円
マニュアル作成の人件費(実質)約100万円相当
社員研修の費用(実質)約30万円相当
合計約330万円

取得後の年間維持コスト

ISO9001は取得して終わりではなく、毎年のサーベイランス審査(維持審査)と3年に1度の更新審査があります。維持にかかる年間コストは次のとおりです。

項目年間コスト
サーベイランス審査費用約25万円
内部監査の実施(人件費換算)約20万円相当
文書更新・記録管理(人件費換算)約30万円相当
3年に1度の更新審査(年割)約15万円
年間維持コスト 合計約90万円

維持コストの大半は外部費用ではなく社内の人件費換算です。「文書管理者」「内部監査員」を兼任で配置できるかが維持の鍵になります。

内部監査員の養成

ISO9001を維持するうえで欠かせないのが内部監査員です。P総合電設様では、外部研修(2日間・1人あたり7万円程度)に2名を派遣し、社内で内部監査ができる体制を整えました。

内部監査員に求められる能力養成方法
ISO9001の要求事項の理解外部研修・JIS規格の購読
監査技法(質問・観察・記録)研修+OJT
客観性・独立性自部署以外を監査する原則
是正処置の合理性判断経験の蓄積

兼任で社内2名を養成すると、外部に内部監査を委託せずに済み、長期的には数十万円規模のコスト削減になります。

活用のポイント

  1. 施工チェックリストの標準化: 工種ごとの施工チェックリストを作成し、全現場で統一的に品質確認を実施。「誰がやっても同じ品質」を目指す仕組みを構築
  2. 不適合管理の仕組み化: 品質上の問題が発生した場合、原因分析→是正処置→効果確認のサイクルを回す仕組みを導入。同じ問題の再発を防止
  3. 顧客満足度の調査: 完工後に発注者にアンケートを実施し、満足度を数値化。改善ポイントを次の工事に反映
  4. 年1回の管理レビュー: 経営層が品質目標の達成状況を確認し、次年度の目標を設定。PDCAサイクルを経営レベルで回す

主な品質チェックリスト

工種チェック項目数主なチェック内容
配管工事15項目支持間隔、曲がり半径、防火区画貫通部の処理
配線工事12項目配線の色分け、端末処理、ケーブルの傷の有無
器具取付10項目取付高さ、水平・垂直の確認、接地の接続
盤内配線14項目結線の確認、トルク値の記録、ラベル表示
検査・試験18項目絶縁抵抗、接地抵抗、回路確認

導入後の成果

項目取得前取得後
品質クレーム件数年5〜6件年1〜2件
手直し工事のコスト年間約200万円年間約50万円
工事成績評定(品質項目)平均65点平均75点
大手ゼネコンからの指名2社5社
社員の品質意識(5段階)2.54.0
経審W点への加点なし+10点

取り組みで苦労した点

順調に進んだ取り組みも、振り返ると以下のような苦労がありました。

文書化への抵抗

ベテラン現場監督の中には「今までもしっかり品質管理してきた。なぜ書類を増やすのか」という抵抗感がありました。藤井社長は朝礼で「文書は若手や新人のためでもある」「自分の経験を他人にも使ってもらうための仕組みだ」と繰り返し説明し、半年かけて社内の理解を得ました。

チェックリストの実用化

最初に作成したチェックリストは項目数が多すぎて現場で使われない状態が続きました。3回の改訂を経て、工種ごとに「絶対外せない項目」だけを残し、現場監督が10分以内に記入できるボリュームに調整しました。

「最初は『これ全部チェックしてたら工事が進まない』と現場から苦情が来ました。コンサルさんと相談して、現場の負担と品質確保のバランスを取るのに半年かかりましたね。」

— P総合電設株式会社 品質管理担当 山口様

是正処置の文化

不適合が発生した際、これまでは「やった人を怒って終わり」になりがちでした。ISO9001の要求では原因分析→是正処置→効果確認のサイクルを回す必要があり、「人を責めずに仕組みを直す」という文化への転換に時間がかかりました。最初の半年は形式的な是正処置に留まりましたが、内部監査員が「同じ不適合が繰り返されている」と指摘するようになってから、本質的な原因分析が定着しました。

経営審査事項(経審)への影響

ISO9001取得は、公共工事の入札参加資格に直結する経営事項審査(経審)でも加点対象です。P総合電設様の経審スコアの変化は次のとおりです。

項目取得前取得後
W点(その他の審査項目)35点45点
総合評定値(P点)720点745点
入札参加資格ランクB等級A等級(自治体による)

詳細は公共工事の入札ガイドもあわせて参照ください。経審の加点幅は自治体によって異なりますが、P点で20〜30点の上昇は受注機会の拡大に直結します。

ご担当者様の声

「ISOを取って一番変わったのは、社員の意識です。以前は『検査が通ればOK』だったのが、今は自分の施工をチェックリストで確認してから次の工程に進むのが当たり前になりました。品質クレームが減ったのはその結果だと思います。」

— P総合電設株式会社 代表取締役 藤井様

「大手ゼネコンさんから『ISO持っているなら安心だね』と言われて指名していただけることが増えました。認証取得のコストは2年で回収できました。」

— P総合電設株式会社 営業部長 野口様

「最初は書類が増えて面倒だと思っていましたが、チェックリストを使うようになってから、自分の施工に自信が持てるようになりました。確認漏れがなくなるので、手直しで現場に戻ることがほとんどなくなりました。」

— P総合電設株式会社 現場監督 田村様

取得から3年後の展開

P総合電設様はISO9001取得の翌々年にISO14001(環境マネジメント)の追加取得にも踏み切りました。電気工事業として環境負荷の高い領域(VOC建材、産廃、フロン)が増えていることと、再エネ案件で発注者から環境配慮の証明を求められるケースが増えたためです。

ISO9001を一度運用に乗せた経験があったため、ISO14001の取得は約6ヶ月(ISO9001の約半分の期間)で完了。コストもISO9001取得時より低く抑えられました。

項目ISO14001追加取得
取得期間約6ヶ月
コンサル費用約80万円
審査費用約30万円
統合審査による次年度の削減効果約15万円/年

ISO9001とISO14001は統合マネジメントシステムとして一体運用が可能であり、文書体系・内部監査・管理レビューを統合することで、運用負荷を最小限に抑えられます。

これからISO取得を検討する会社へのアドバイス

藤井社長から、同様の規模の電気工事業者へのアドバイスをまとめました。

  1. 目的を明確に: 経審加点・大手指名・社内改革のどれが主目的かを最初に決める。目的が曖昧だと取得後に「やる意味あったの?」となりやすい
  2. コンサルタント選びは慎重に: 電気工事業の実績があるコンサルを選ぶ。一般論ばかりのコンサルだと現場と合わない文書ができる
  3. 役員のコミットメント: 経営層が「自分が責任者」と宣言しないと社内は動かない。形式的な「品質方針」だけでは不十分
  4. 文書は最小限から: 最初から完璧な文書を目指さず、運用しながら3回くらい改訂する前提で始める
  5. 記録の電子化: 紙の記録から電子化へ移行すると維持の負担が大きく減る。クラウド型の品質管理ツールも検討の余地あり
  6. 取得後の運用が本番: 取得時より維持時のほうが長い。3年・5年・10年と続く活動として位置づける

「ISOは『取るのが目的』ではなく『続けて改善するのが目的』だと、3年経ってようやく分かりました。これから取る方は最初からそのつもりで取り組んでほしいです。」

— P総合電設株式会社 代表取締役 藤井様

取得を判断する目安

最後に、ISO9001の取得を経営的に判断するための目安を整理します。次の条件のうち2つ以上に当てはまる場合は取得検討の価値が高いと言えます。

  • 公共工事の元請を狙う、または公共工事の比率を上げたい
  • 大手ゼネコンの一次協力会社として安定指名を目指している
  • 従業員が15名以上で、品質管理の属人化が進んでいる
  • 品質クレームによる手直しコストが年間100万円を超えている
  • 経営者として「次の世代に引き継げる仕組み」を残したい

逆に従業員数名で個別案件中心の小規模事業者は、ISO9001よりも先に業務効率化ツールの導入で本業の生産性を上げたほうが経営インパクトが大きいケースが多いです。

まとめ

ISO9001の認証取得により、品質クレームを年5〜6件から1〜2件に削減。大手ゼネコンからの指名も増え、受注の幅が広がりました。ISO取得のコスト(約330万円)は、手直し工事の削減と新規受注の増加により2年以内に回収。品質管理の仕組み化は、会社の信頼と利益の両方を高めます。

同規模会社が陥りやすいパターン

P総合電設様の事例を踏まえると、従業員10〜50名規模の電気工事会社がISO取得で陥りやすい失敗パターンと回避策は次のとおりです。

失敗パターン回避策
コンサルに丸投げして社内に文書理解が残らない必ず社内責任者を1名置き、コンサルと並走する
文書が増えすぎて誰も読まない「現場で実際に使う書類」と「審査用に整える書類」を分ける
取得直後に取り組みが停滞する月次レビューを必須化し、品質目標の進捗を毎月確認
社員が「ISOの活動」を本業と切り離す既存の朝礼・KY活動の中にISOの観点を組み込む
認証機関を価格だけで選ぶ電気工事業の審査実績がある機関を選ぶ

特に最後の「認証機関選び」は見落とされがちですが、業界に詳しい審査員が来ると現場感のある指摘が得られ、改善のヒントになります。逆に異業種ばかり審査している機関だと一般論の指摘に終始し、形式的な認証で終わってしまいます。

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