公共工事の落札率を上げるための積算と価格戦略
落札率とは
落札率とは、入札に参加した件数に対して落札できた件数の割合です。
落札率 = 落札件数 ÷ 入札参加件数 × 100
中小の電気工事会社の落札率は、一般的に20〜30%程度といわれています。つまり、10件入札して2〜3件しか落札できない計算です。この落札率を数ポイント上げるだけで、年間の受注金額に大きな差が出ます。
落札の仕組みを理解する
予定価格と最低制限価格
公共工事の入札では、発注者が予定価格と最低制限価格を設定します。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 予定価格 | 発注者が設計積算に基づいて設定する上限価格。これを超える入札は無効 |
| 最低制限価格 | これを下回る入札は失格になる下限価格(ダンピング防止) |
| 調査基準価格 | 低入札調査制度の場合、この価格を下回ると調査対象になる |
落札の条件: 最低制限価格 ≤ 入札価格 ≤ 予定価格 の範囲内で、最も低い金額
予定価格の算出方法
予定価格は、発注者が設計積算基準に基づいて算出します。電気設備工事の場合、以下の積算体系が一般的です。
予定価格 = 直接工事費 + 共通仮設費 + 現場管理費 + 一般管理費等
各費目の算出には、国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」 が使われます。この基準を理解することが、予定価格に近い積算を行うための第一歩です。
最低制限価格の算出方法
最低制限価格は、予定価格の70〜90%の範囲で設定されるのが一般的です。算出方法は発注機関によって異なりますが、多くの場合は以下のような計算式が使われます。
最低制限価格 = 直接工事費×97% + 共通仮設費×90% + 現場管理費×90% + 一般管理費等×55%
※ 上記は一例であり、発注機関によって率が異なります。
積算精度を上げる5つのポイント
ポイント1: 設計積算基準を正しく理解する
発注者の積算と自社の積算の差を最小限にするために、発注者が使う積算基準を正しく理解しましょう。
- 国交省の「公共建築工事共通費積算基準」
- 「公共建築工事標準単価積算基準」
- 「電気設備工事費の積算についての標準歩掛」
これらの基準を入手し、自社の積算に反映させることで、予定価格への精度が上がります。
ポイント2: 物価資料を活用する
材料費の単価は、「建設物価」や「積算資料」 などの刊行物に掲載されている単価を参考にします。発注者もこれらの刊行物を参照して設計積算を行うため、同じ単価を使うことで予定価格への精度が向上します。
ただし、実際の購入価格が物価資料の単価より安い場合、物価資料の単価で積算し、実際は安く仕入れて差額を利益にするのが一般的な戦略です。
ポイント3: 歩掛りの精度を高める
労務費の計算に使う歩掛り(1単位あたりの必要人工)は、発注者と施工者で差が出やすい項目です。
自社の歩掛りデータを蓄積し、発注者の標準歩掛りとの差異を把握しておくことで、より正確な積算が可能になります。
歩掛りの詳細は「電気工事の見積書 書き方と単価設定のポイント」で解説しています。
ポイント4: 過去の落札データを分析する
過去の入札結果(落札金額・予定価格)は、多くの発注機関で公開されています。
分析すべきポイントは以下のとおりです。
| 分析項目 | 見るべき数値 |
|---|---|
| 落札率(落札金額÷予定価格) | 電気設備工事の平均的な落札率の傾向 |
| 参加者数 | 競争の激しさ |
| 最低入札額と最高入札額の差 | 業者間の積算のばらつき |
| 同種工事の落札傾向 | 類似案件の過去の落札率 |
これらのデータを蓄積・分析することで、「この発注機関のこの規模の工事なら、予定価格の○○%程度が落札ゾーン」 という傾向が見えてきます。
ポイント5: 現場条件を正確に反映する
設計積算基準は「標準的な条件」を前提としています。現場特有の条件(狭隘な搬入経路、高所作業の多さ、既設設備との取り合い等)を積算に反映することで、実態に即した金額を算出できます。
価格戦略の考え方
戦略1: ターゲット案件を絞る
すべての案件に均一の積算努力をかけるのではなく、落札可能性が高い案件に集中投資する戦略です。
| 優先すべき案件 | 理由 |
|---|---|
| 過去に施工実績がある発注機関の案件 | 現場条件の把握、実績の信頼 |
| 自社の得意分野の案件 | 歩掛りの精度が高く、コスト競争力がある |
| 競合が少ない案件 | 参加者数が少なければ落札確率が上がる |
| 自社技術者の空きがある時期の案件 | 技術者確保の確実性 |
戦略2: 見積精度で勝負する
ダンピング(不当な安値入札)はリスクが高く、工事品質の低下や赤字を招きます。代わりに、積算精度を高めて適正利益を確保しながら競争力のある価格を出すことが持続的な戦略です。
戦略3: 総合評価方式では技術点で勝つ
総合評価方式では、技術点が高ければ価格が多少高くても落札できる可能性があります。技術提案書に注力することで、価格競争だけに依存しない入札が可能になります。
技術提案書の書き方は「総合評価方式の技術提案書で差をつける書き方」で解説しています。
入札価格の最終チェック
入札書を提出する前に、以下のチェックを行います。
- 予定価格の推定値を超えていないか
- 最低制限価格の推定値を下回っていないか
- 自社の利益が確保できる金額か
- 金額の桁に間違いがないか
- 消費税の扱い(税抜き/税込み)が正しいか
まとめ
落札率の向上は、「安く入れる」ことではなく、「発注者の積算に近い精度の積算をする」 ことがポイントです。設計積算基準の理解、物価資料の活用、歩掛りの精度向上、過去データの分析。これらの地道な取り組みが、落札率の向上と適正利益の確保を両立させます。
