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低入札価格調査制度とは?電気工事の注意点

低入札価格調査制度とは?電気工事の注意点

低入札価格調査制度とは

低入札価格調査制度は、入札価格が著しく低い場合に、その価格で適正な施工が可能かどうかを調査する制度です。いわゆる「ダンピング受注」を防止するために設けられています。

最低制限価格制度との違い

公共工事の入札には、低価格を規制する2つの制度があります。

制度仕組み効果
最低制限価格制度基準価格を下回った入札は自動的に失格明確で運用がシンプル
低入札価格調査制度基準価格を下回った入札は調査の上で判断柔軟だが手続きが複雑

最低制限価格制度は主に地方自治体で、低入札価格調査制度は国の機関(国土交通省等)で多く採用されています。

調査基準価格の算出方法

調査基準価格は、予定価格の構成要素をもとに以下のように算出されます(国土交通省の場合)。

調査基準価格 = 直接工事費×0.97 + 共通仮設費×0.90
             + 現場管理費×0.90 + 一般管理費等×0.55

ただし、予定価格の70%〜92%の範囲内に収める調整が行われます。

数値例

予定価格1,000万円(直接工事費600万、共通仮設費50万、現場管理費200万、一般管理費等150万)の場合:

調査基準価格 = 600×0.97 + 50×0.90 + 200×0.90 + 150×0.55
            = 582 + 45 + 180 + 82.5
            = 889.5万円(予定価格の約89%)

この場合、889.5万円を下回る入札を行うと調査対象になります。

調査の内容

調査で確認される事項

低入札価格調査では、以下の内容について書面および対面で調査が行われます。

調査項目確認内容
入札金額の内訳直接工事費・諸経費の内訳と根拠
施工体制技術者の配置、下請の使用計画
手持ち工事の状況他の工事への影響がないか
過去の工事実績類似工事での実績と工事成績
資材の調達計画資材の調達先と単価の根拠
労務費の算定根拠労働関係法令に適合する賃金が確保されているか
安全衛生の確保安全対策費用が十分に計上されているか

調査の流れ

  1. 書面提出の要請: 発注者から入札金額の内訳書と施工計画の提出を求められる
  2. ヒアリング: 発注者との対面での質疑応答(通常1〜2時間)
  3. 追加資料の提出: 必要に応じて追加の説明資料を提出
  4. 判定: 適正な施工が可能と判断されれば落札、不可と判断されれば失格

調査にかかる期間

調査は通常2〜4週間を要します。この間、落札者が決定しないため、工事の着工も遅れます。

電気工事業者が注意すべきポイント

注意1: 安全対策費の確保

電気工事は感電・墜落という重大リスクを伴うため、安全対策費を過度に削減することは調査で厳しく指摘されます。

以下の費用が適切に計上されているか確認されます。

  • 安全保護具(絶縁手袋、フルハーネス等)の費用
  • 安全教育・訓練の費用
  • 安全パトロールの人件費
  • 仮設安全設備(バリケード、看板等)の費用

注意2: 労務費の適正性

2024年4月からの残業規制により、以前より多くの人員が必要になるケースがあります。労務費を抑えすぎると、以下のリスクがあります。

  • 調査で「適正な賃金が確保されていない」と判断される
  • 施工中に人員不足で工期に間に合わなくなる
  • 残業規制に違反する

注意3: 材料費の根拠

材料費を物価資料の単価より大幅に安い金額で計上する場合は、仕入れ先からの見積書等の根拠資料が必要になります。「安く仕入れられる予定」だけでは根拠として認められません。

注意4: 下請への適正な支払い

低い入札価格の「しわ寄せ」が下請業者に及んでいないかも調査対象です。下請契約の金額が建設業法で定める「不当に低い請負代金」 に該当しないか確認されます。

調査対象になった場合の対応

対応1: 内訳書を正確に準備する

入札金額の内訳書は、発注者の積算体系に合わせた構成で作成します。自社独自の積算方法だと比較が困難になり、調査が長引きます。

対応2: コスト削減の根拠を明確に

「なぜ安くできるのか」を具体的に説明できるよう準備します。

説得力のある根拠の例

根拠具体的な説明
材料の大量一括購入同時期に施工する3現場分のケーブルを一括発注し、15%のディスカウントを得ている
自社加工による工数削減ケーブルラックの工場プレハブ加工により、現場作業日数を20%削減
近距離の現場営業所から5km以内のため、通勤費と運搬費を最小化
類似工事の蓄積同じ自治体の同種工事を過去3件施工しており、効率的な施工が可能

対応3: ヒアリングに備える

対面のヒアリングでは、技術的な質問にも回答できるよう、現場を知る技術者が同席することが望ましいです。

そもそも低入札を避けるべき理由

調査対象にならない入札(調査基準価格以上)を行うことが、最も効率的です。

低入札のリスク内容
調査による着工遅延2〜4週間の遅れが発生
書類準備の負担内訳書・施工計画の追加提出
失格のリスク調査の結果、失格になる可能性がある
赤字工事のリスク実際の施工コストが入札金額を超える
工事成績の低下コスト不足で品質が低下し、成績評定に影響

適正な利益を確保しながら落札する戦略については「公共工事の落札率を上げるための積算と価格戦略」で解説しています。

まとめ

低入札価格調査制度は、ダンピングを防止し適正な施工品質を確保するための制度です。電気工事業者にとっては、安全対策費と労務費の適正な計上が特に重要なチェックポイントになります。

調査対象になること自体が悪いわけではありませんが、調査に要する時間と労力、失格のリスクを考えると、調査基準価格以上で入札し、技術力と積算精度で勝負するのが最も合理的な戦略です。

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