電気工事業の利益率の相場と改善のための3つの視点
電気工事業の利益率の相場
業界平均データ
電気工事業の利益率は、企業規模や工事の種類によって大きく異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
| 指標 | 業界平均の目安 |
|---|---|
| 売上総利益率(粗利率) | 15〜25% |
| 営業利益率 | 3〜8% |
| 経常利益率 | 3〜7% |
企業規模別の傾向
| 企業規模 | 売上総利益率 | 営業利益率 |
|---|---|---|
| 大手(売上100億円以上) | 12〜18% | 5〜8% |
| 中堅(売上10〜100億円) | 15〜22% | 4〜7% |
| 中小(売上10億円未満) | 18〜28% | 2〜6% |
中小企業の方が粗利率は高い傾向にありますが、固定費(管理部門の人件費、事務所費等)の売上に対する比率が高いため、営業利益率は低くなりがちです。
工事種別による違い
| 工事種別 | 利益率の傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 公共工事 | やや低い(3〜5%) | 予定価格に基づく適正利益の範囲内 |
| 民間工事(元請) | やや高い(5〜8%) | 価格交渉の余地がある |
| 民間工事(下請) | 中程度(3〜6%) | 元請からの価格プレッシャー |
| 保守・メンテナンス | 高い(10〜20%) | 緊急対応のプレミアムが乗る |
自社の利益率を分析する方法
ステップ1: 全体の利益率を確認
まず、直近3期の損益計算書から以下を確認します。
| 指標 | 計算式 |
|---|---|
| 売上総利益率 | (売上高 − 売上原価)÷ 売上高 × 100 |
| 営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 × 100 |
ステップ2: 工事ごとの利益率を確認
全体の利益率だけでなく、工事ごとの利益率のばらつきを分析します。
| 工事名 | 契約金額 | 原価 | 粗利 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|
| A工事 | 2,000万円 | 1,600万円 | 400万円 | 20% |
| B工事 | 1,500万円 | 1,400万円 | 100万円 | 7% |
| C工事 | 800万円 | 850万円 | -50万円 | -6% |
このように工事ごとに分析すると、「利益を生む工事」と「利益を食う工事」 が見えてきます。
ステップ3: 利益率が低い工事の原因分析
利益率が低い工事について、以下の観点で原因を分析します。
| 原因カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 見積段階 | 歩掛りの甘さ、材料費の見落とし、諸経費の計上不足 |
| 施工段階 | 手戻り、手待ち時間、追加作業の未請求 |
| 精算段階 | 設計変更の精算漏れ、追加工事の未請求 |
原価管理の手法は「電気工事の原価管理で利益率を改善する方法」で詳しく解説しています。
利益率を改善する3つの視点
視点1: 受注戦略の見直し
「利益の出る工事を選んで受注する」 ことが、利益率改善の最もインパクトが大きい方法です。
| 戦略 | 内容 |
|---|---|
| 得意分野への集中 | 自社が高い品質とコスト競争力を持つ工種に注力 |
| 利益率の低い工事の見極め | 過去データに基づき、利益が出にくいタイプの工事を把握 |
| 適正な価格での受注 | ダンピング受注を避け、適正利益を確保した価格で入札 |
| ストック型ビジネスの強化 | 保守・点検契約で安定的な売上と高利益率を確保 |
特に保守・メンテナンス業務は、新規工事に比べて利益率が高い傾向にあります。竣工した物件の保守契約を積極的に提案することで、安定した収益基盤を構築できます。
視点2: 原価管理の徹底
「同じ仕事を、より少ないコストで行う」 ための取り組みです。
| 施策 | 効果の目安 |
|---|---|
| 歩掛りデータの蓄積と活用 | 見積精度の向上 → 赤字工事の減少 |
| 材料の共同購入・一括発注 | 材料費の5〜15%削減 |
| プレハブ加工の活用 | 現場作業時間の20〜30%削減 |
| 設計変更の確実な精算 | 取りこぼしていた増額分の回収 |
| 日報による原価のリアルタイム管理 | 予算超過の早期発見と対策 |
視点3: 生産性の向上
「同じ人数で、より多くの仕事をこなす」 ための取り組みです。
| 施策 | 効果の目安 |
|---|---|
| 書類作成の効率化 | 残業時間の削減 → 人件費の抑制 |
| 工事写真のデジタル化 | 写真整理時間の80%削減 |
| 案件管理のクラウド化 | 情報確認時間の90%削減 |
| BIM/CIMの活用 | 手戻りの削減 → 施工時間の短縮 |
| 技術者の育成 | 一人あたりの生産性向上 |
利益率改善のKPI設定
改善を「なんとなく」進めるのではなく、数値目標(KPI)を設定して進捗を管理します。
| KPI | 現状値 | 目標値 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 営業利益率 | 3% | 5% | 1年後 |
| 赤字工事の割合 | 20% | 5%以下 | 1年後 |
| 歩掛りデータの蓄積件数 | 0件 | 50件 | 6ヶ月後 |
| 書類作成の平均時間 | 60時間/件 | 30時間/件 | 6ヶ月後 |
利益率と経審(経営事項審査)の関係
利益率の改善は、経審のY点(経営状況分析)にも直接影響します。
| 経審の指標 | 利益率との関係 |
|---|---|
| 総資本売上総利益率 | 粗利率が高いほど高評価 |
| 売上高経常利益率 | 経常利益率が高いほど高評価 |
| 営業キャッシュフロー | 利益が上がればキャッシュフローも改善 |
| 利益剰余金 | 利益の蓄積が評価される |
つまり、利益率の改善は「経営の安定」と「入札力の強化」の両方に効果があります。
経審のP点向上策は「経営事項審査(経審)のP点を上げる7つの方法」で詳しく解説しています。
まとめ
電気工事業の営業利益率は業界平均で3〜8%ですが、受注戦略・原価管理・生産性向上の3つの視点で取り組めば、数ポイントの改善は十分に実現可能です。
まずは自社の工事ごとの利益率を分析し、「どの工事で利益が出ているか、出ていないか」を把握することから始めてください。データに基づいた改善が、確実な利益率向上への第一歩です。
