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入札不調・不落はなぜ起きる?電気工事業者の視点で解説

入札不調・不落はなぜ起きる?電気工事業者の視点で解説

入札不調・不落とは

入札の「不調」と「不落」は、入札が成立しなかった状態を指します。

用語意味
不調入札に参加する業者がいない(参加者ゼロ)、または参加者が規定数に満たない
不落入札に参加したが、すべての業者の入札金額が予定価格を超えた

いずれの場合も落札者が決まらず、再入札や随意契約への移行が必要になります。

入札不調・不落が増加している背景

近年、公共工事の入札不調・不落が全国的に増加しています。特に電気設備工事は、建築・土木と比べて不調率が高い傾向にあります。

主な原因

原因1: 人手不足による受注能力の限界

電気工事業界では70.5%の事業者が人手不足を感じています。配置できる技術者が限られているため、手持ち工事が多い時期は新しい案件に入札できません。

特に問題なのは、監理技術者・主任技術者の専任義務です。一定規模以上の工事では技術者を専任で配置する必要があり、同時に受注できる工事数に物理的な上限があります。

原因2: 予定価格と実勢価格の乖離

発注者の設計積算に使用する単価(労務単価・材料単価)が、実際の市場価格に追いついていないケースがあります。

特に以下の項目で乖離が発生しやすくなっています。

項目乖離の原因
労務費2024年問題による残業規制で、実質的な人件費が上昇
材料費銅価格の高騰によるケーブル価格の上昇
運搬費物流コストの上昇
諸経費安全対策費用の増加(フルハーネス、熱中症対策等)

原因3: 工期の問題

発注者が設定する工期が、現場の実情に合っていない場合があります。週休2日を前提とした工期が確保されていないと、受注しても労働時間規制に抵触するリスクがあり、入札を見送らざるを得ません。

原因4: 発注時期の偏り

公共工事の発注は年度末(1〜3月)に集中する傾向があります。この時期は多くの業者が手持ち工事を抱えているため、新規の入札に参加する余裕がありません。

原因5: 小規模事業者の撤退

経営者の高齢化や後継者不在により、廃業する電気工事会社が増えています。入札に参加できる業者の母数が減少していることも、不調の一因です。

不調・不落が起きるとどうなるか

発注者側の対応

対応内容
再入札条件を変えて再度入札を実施
随意契約特定の業者と直接交渉して契約
設計変更予定価格の見直し(単価の更新)を行って再発注
発注の延期・中止工事自体を延期または中止

施工者側への影響

不調・不落は一見すると施工者に有利(競争が少ない)に思えますが、以下のデメリットもあります。

  • 再入札による手間の増加: 再度の書類準備が必要
  • 随意契約のプレッシャー: 発注者から直接依頼されると断りにくい(技術者不足でも)
  • 発注の延期: 将来の受注機会が不透明に
  • インフラ整備の遅れ: 地域の電気設備インフラの更新が遅れ、将来の大規模改修が集中するリスク

電気工事業者ができる対策

対策1: 年間の受注計画を策定する

発注見通しを確認し、年間の受注計画を策定します。繁忙期に入札が集中しても対応できるよう、技術者の配置計画を事前に立てておくことが重要です。

対策2: 技術者の確保・育成

入札に参加できない最大の理由は「配置できる技術者がいない」です。

  • 2級→1級の資格取得を推進: 監理技術者として配置できる人材を増やす
  • 若手の早期育成: 施工計画書の品質が工事成績評定に与える影響でも述べたように、AIツール等を活用して若手の育成を加速
  • 技術者の複数確保: 退職・病気のリスクに備え、複数の有資格者を確保

対策3: 発注者への働きかけ

業界団体を通じて、以下の改善を発注者に要請することも重要です。

  • 適正な予定価格の設定: 最新の労務単価・材料単価への更新
  • 適切な工期の設定: 週休2日を前提とした工期の確保
  • 発注時期の平準化: 年度末への集中を避け、通年での発注
  • 余裕ある公告期間: 入札準備に十分な期間の確保

対策4: JV(共同企業体)の活用

単独では受注できない規模の工事でも、他社とJVを組むことで参加できる場合があります。特に技術者の配置が課題の場合、JVによって負担を分散できます。

対策5: 書類準備の効率化

入札を見送る理由の一つに「書類準備に時間が取れない」があります。入札書類のテンプレート整備やデジタルツールの活用で、1件あたりの準備時間を短縮すれば、より多くの案件に参加できるようになります。

入札書類の準備については「電気設備工事の入札書類 準備チェックリスト30項目」を参照してください。

まとめ

入札不調・不落の増加は、人手不足と予定価格の乖離という構造的な問題に起因しています。個社レベルでは技術者の確保・育成と書類準備の効率化で参加可能件数を増やし、業界レベルでは発注者への適正な条件設定の要請を続けることが必要です。

不調が続く状況は、裏を返せば「参加すれば落札できる確率が高い」 状況でもあります。入札に参加できる体制を整えることが、受注機会の最大化につながります。

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