情報漏洩の原因と対策|電気工事会社の図面・名簿の守り方
情報漏洩の原因は、大きく分けて①不正アクセスやウイルス感染などの外部からの攻撃、②誤送付・誤送信・紛失などの不注意、③従業員や退職者による内部不正の3つです。対策は、原因ごとに「入られない」「間違えない」「持ち出させない」仕組みを作ることに尽きます。
個人データが漏えいした場合は、内容によって個人情報保護委員会への報告と本人への通知が法律上の義務になります。電気工事会社は、協力会社の作業員名簿、保守契約先の顧客台帳、発注者の施設図面など、性質の違う情報を同時に預かっています。この記事では、情報の種類ごとに原因と対策を整理し、漏えいが起きたときの手順をまとめます。
数字で見る情報漏洩
個人情報保護委員会の年次報告によると、民間事業者からの個人データの漏えい等の報告の処理件数は、令和6年度が19,056件、令和7年度が17,139件でした。令和6年度の内訳では、報告義務の類型として「要配慮個人情報を含む個人データの漏えい等」が45.4%で最も多く、「不正の目的をもって行われたおそれのある漏えい等」(不正アクセス等)が39.9%で続きました。1件あたりの漏えい人数は1,000人以下の事案が88.3%を占めています。
小さな会社の、少人数の漏えいでも報告の対象になり得るということです。
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編では、「内部不正による情報漏えい等」が7位、「ランサム攻撃による被害」が1位で、ランサム攻撃でも情報が盗まれる被害が多く起きています(ランサムウェア対策の記事参照)。
電気工事会社が預かる情報と主な漏洩の原因
| 情報 | 中身の例 | 起こりやすい原因 |
|---|---|---|
| 協力会社の作業員名簿・安全書類 | 氏名、生年月日、住所、資格、保険の加入状況など | 元請への誤送信、共有フォルダの公開設定ミス |
| 健康に関する情報 | 健康診断の結果など | 要配慮個人情報に当たる情報の不用意な共有 |
| 保守契約先の顧客台帳 | 担当者の連絡先、設備の点検記録 | 退職者による持ち出し、メールの乗っ取り |
| 発注者の施設図面・設備情報 | 受変電設備の配置、単線結線図、入館の手順 | 現場タブレットの紛失、生成AIへの入力 |
| 住宅・店舗の施主の情報 | 住所、電話番号、間取り | 工事写真の外部共有、SNSへの写り込み |
| 入札・見積の情報 | 積算の内訳、入札金額 | 不正アクセス、内部不正 |
健康診断の結果などの要配慮個人情報(本人に対する不当な差別や偏見が生じないよう特に配慮が必要な個人情報のこと)は、人数にかかわらず漏えいすれば報告の対象になります。安全書類の運用はグリーンファイルの効率化の記事も参考にしてください。
原因別の対策
外部からの攻撃
- OS・ソフト・VPN機器の更新、ウイルス対策ソフト、多要素認証を徹底する(多要素認証の記事)
- 不審なメールの添付ファイルやリンクを開かない(メール経由の事故の記事)
不注意(誤送付・紛失・設定ミス)
- 協力会社に送る名簿は、送る前に宛先と添付ファイルを2人で確認する
- クラウドの共有リンクは「リンクを知っている全員」にせず、相手を指定し、期限を付ける
- 現場タブレットは画面ロックと遠隔消去を設定する(MDMの記事)
IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」には、建設業の会社(石川県、従業員101〜300名)で、顧客情報の入ったパソコンを従業員が持ち出した際に紛失し、取引先の信用を失った事例が載っています。持ち出しのルールがなかったことが原因で、その後、機器の暗号化や持ち出しルールの整備、教育が行われました。
内部不正
- 顧客台帳や見積データにアクセスできる人を、必要な人に限る
- 退職時はアカウントを当日中に止め、貸与した端末とデータを回収する
- 入社時・退職時に秘密保持の誓約を取る
漏えいしたときの手順
報告が義務になる4つの場合
個人情報保護委員会によると、民間事業者は次のいずれかに当たる漏えい等(そのおそれを含む)が起きたとき、委員会への報告が必要です。
| 類型 | 電気工事会社での例 |
|---|---|
| 要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等 | 作業員の健康診断の結果が含まれたファイルの誤送信 |
| 不正に利用されることで財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等 | 決済や送金に使える情報(クレジットカード番号など)を含むデータの流出 |
| 不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい等 | 不正アクセスやランサムウェアによる流出、内部不正による持ち出し |
| 本人の数が1,000人を超える個人データの漏えい等 | 長年の顧客台帳や作業員名簿のまとまった流出 |
報告の期限
| 報告 | 期限 |
|---|---|
| 速報 | 発覚日から3〜5日以内(まずは速やかに) |
| 確報 | 発覚日から30日以内。不正の目的で行われたおそれがある場合は60日以内 |
個人情報保護法は、報告の対象となる場合に本人への通知も原則として求めています。なお、個人情報保護法の改正法が2026年7月17日に公布されており、委員会は政令・規則・ガイドラインの検討を続けるとしています。報告や通知の実務は、委員会の最新の案内で確認してください。
初動の流れ
- 漏えいした(おそれのある)情報と範囲を特定し、拡大を止める(共有リンクの停止、端末の遠隔ロックなど)
- 社長・事務責任者に報告し、記録を取り始める
- 上の4類型に当たるかを確認し、当たれば速報の準備をする
- 発注者・元請・協力会社など、影響を受ける取引先に連絡する
- 本人への通知と、問い合わせ窓口を用意する
- 原因を調べ、再発防止策を決める
【独自】預かっている情報の棚卸し表
漏えいが起きてから「何を持っていたか」を調べるのでは間に合いません。平時に次の表を作っておきます。
| 情報 | 保存場所 | 見られる人 | 個人情報か | 要配慮個人情報を含むか | 件数の目安 | 保管期限 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 作業員名簿(安全書類) | 共有フォルダ | 工事部 | はい | 含む場合あり | 記入 | 工事完了後○年 |
| 保守契約先の顧客台帳 | 顧客管理システム | 営業・保守 | はい | いいえ | 記入 | 契約終了後○年 |
| 発注者の施設図面 | 図面クラウド | 担当現場のみ | いいえ | いいえ | 記入 | 契約の定めに従う |
まとめ
情報漏洩の原因は、外部からの攻撃、不注意、内部不正の3つです。電気工事会社は、作業員名簿や健康に関する情報、保守契約先の顧客台帳、発注者の施設図面と、性質の違う情報を預かっているので、棚卸し表で保存場所と見られる人を把握し、原因ごとの対策を進めましょう。個人データの漏えいは4つの類型に当たると報告が必要で、速報は発覚から3〜5日以内が目安です。
あわせて読みたい
- ランサムウェア対策と感染したら|電気工事会社の初動と備え
- MDMとは|現場タブレット・社用スマホの紛失対策
- ChatGPTの情報漏洩を防ぐ社内ルール|電気工事会社の線引き
- 安全書類(グリーンファイル)の作成を効率化する方法
出典・参考
- 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/
- 個人情報保護委員会「令和6年度 年次報告」https://www.ppc.go.jp/aboutus/report/annual_report_2024/
- 個人情報保護委員会「令和7年度年次報告の概要について」(令和8年7月)https://www.ppc.go.jp/files/pdf/080707_annual_report_gaiyou.pdf
- 個人情報保護委員会「令和8年改正個人情報保護法について」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/r8kaiseihogohou/
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日)https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(2026年3月27日)https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html
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