EDRとは?UTMとの違い|電気工事会社のウイルス対策の選び方
EDR(Endpoint Detection and Response)は、パソコン・サーバー・スマホなどの端末に侵入した攻撃を検出し、管理者に通知する仕組みです。UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)は、ファイアウォールやメールフィルタリング、URLフィルタリングなどの複数の機能を1台にまとめ、社内ネットワークとインターネットの境目で守る機器です。従来のウイルス対策ソフトは、既知のウイルスを見つけて感染を防ぐもので、3つは守る場所と役割が違います。
どれか1つで十分ということはなく、会社の規模と働き方で組み合わせを決めます。この記事では、事務所が小さく現場に出る社員が多い電気工事会社の目線で整理します。
3つの違いを一覧で比べる
IPA(情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」は、技術的対策の例として次のように説明しています。
| 名前 | 守る場所 | IPAの説明の要点 | 働き方の例 |
|---|---|---|---|
| ウイルス対策ソフト | 各端末 | ウイルスを検知・駆除して感染を防ぐ。定義ファイルを最新にすると既知のウイルスを検知できる | 添付ファイルを開く前に止める |
| EDR | 各端末 | 端末に侵入したウイルスやランサムウェアなどの攻撃を検出し、管理者に通知する | 侵入後の怪しい動きを見つけて知らせる |
| UTM | 社内ネットワークの出入口 | ファイアウォール、IDS・IPS、メールフィルタリング、URLフィルタリングなどを1台に統合 | 不正な通信や危ないサイトへの接続を入口で止める |
IDS・IPSは、不正なアクセスを検知して通知する(IDS)、さらに自動で遮断する(IPS)仕組みのことです。
ウイルス対策ソフトは「最低限」
IPAは、規模を問わず必ず実行すべき「情報セキュリティ6か条」の2番目に「ウイルス対策ソフトを導入しよう!」を挙げ、ウイルス定義ファイル(ウイルスを見分けるためのデータ)を常に最新にするよう求めています。ウイルス対策ソフトが入っていない端末が1台でもあれば、まずそこを埋めるのが先です。
EDRは「入られた後」に気づくため
ウイルス対策ソフトは知っている手口には強い一方、新しい手口や、正規のツールを悪用した攻撃は見逃すことがあります。EDRは端末の動きを記録・監視して、侵入後の不審な動きに気づくための仕組みです。ただし通知を受けて誰が判断し、誰が対応するかが決まっていないと、警告が出ても放置されます。
UTMは「事務所の入口」を守る
UTMは事務所のインターネット回線の出入口に置く機器です。社員が事務所の中で作業する時間が長い会社ほど効果が出ます。一方で、現場に持ち出したタブレットや、自宅から作業するパソコンは事務所のUTMを通らないことがあるため、端末側の対策(ウイルス対策ソフトやEDR)と組み合わせます。
電気工事会社の端末とネットワークを書き出す
選ぶ前に、守る対象を書き出します。電気工事会社では次のような構成が多いはずです。
| 対象 | よくある状況 | 主に効く対策 |
|---|---|---|
| 事務所のパソコン(積算・CAD・会計) | 事務所内で使う。積算データや図面が入っている | ウイルス対策ソフト+UTM、必要に応じてEDR |
| 電子入札用のパソコン | 特定のパソコンに限定して使う | ウイルス対策ソフト、更新の徹底 |
| 現場タブレット・社用スマホ | 現場の回線で使い、事務所を通らない | 端末側の対策とMDM |
| NAS・ファイルサーバー | 図面や工事写真を全員で共有 | UTMで外部からの接続を制限、バックアップ |
| 遠隔監視の機器(顧客設備) | 顧客の受変電設備に置いたゲートウェイ | 機器メーカーの更新と設定の管理 |
選ぶときの観点
特定の製品を勧めることはしませんが、比べるときは次の観点を見てください。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 対象端末 | Windows・Mac・iPad・Androidのうち、自社が使う端末に対応しているか |
| 監視と対応 | 警告を誰が見て、夜間や休日は誰が対応するか。監視を代行するサービスがあるか |
| 管理画面 | 社長や事務員でも、どの端末に入っていて更新されているかを一覧で確認できるか |
| 事務所外の端末 | 現場や自宅で使う端末が守られるか |
| 費用の単位 | 端末1台ごとか、機器1台ごとか。保守費用や更新費用を含めた総額 |
| 事故時の支援 | 感染が疑われたときに駆け付けや調査をしてくれるか |
IT担当がいない会社は「お助け隊サービス」も候補
IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス制度」は、中小企業へのサイバー攻撃への対処として不可欠なサービスをワンパッケージにまとめ、要件を満たす民間サービスをIPAが登録・公表する制度です。IPAのガイドラインは、「見守り」「駆付け」「保険」などをワンパッケージで安価に提供していると説明しています。IPAによると、自社で利用する場合はデジタル化・AI導入補助金による導入支援制度があります。
社長と事務員だけで事務所を回している会社では、機器を入れても「警告を見る人がいない」ことが一番の問題になりがちです。監視と駆け付けが付いたサービスかどうかを比較の軸に入れると、導入後に放置されるのを防げます。
公表されている建設業の事例
IPAのガイドラインには、NPO法人日本ネットワークセキュリティ協会の調査から、建設業(北陸、従業員規模20〜999名)の事例が載っています。VPN機器からの侵入でパソコンとファイルサーバーがランサムウェアに感染し、各社内システムの利用再開に41日、リモートアクセスの利用再開に4か月を要しました。この会社はその後、EDRやバックアップ製品、監視サービスの導入など技術的な対策を強化しています。
入口(VPN機器)の更新が遅れたことが感染の原因になっており、端末の対策だけでなく、機器の更新を止めないことも同じくらい重要だと分かります。ランサムウェアへの備えはランサムウェア対策の記事で詳しく扱っています。
【独自】導入前の点検チェックリスト
- すべてのパソコン・スマホ・タブレットにウイルス対策ソフトが入り、定義ファイルが自動更新になっている
- OSとソフトウェアの更新が止まっている端末がない
- 事務所の外で使う端末を一覧にした
- VPN機器・ルーターのファームウェア(機器を動かす内部のソフト)を最新にした
- EDRやUTMの警告を見る担当と、休日の連絡先を決めた
- 感染が疑われたときの相談先(保守業者・お助け隊サービス等)を決めた
- 見積りで、機器代だけでなく保守・更新の費用を確認した
まとめ
ウイルス対策ソフトは端末で既知の脅威を止める最低限の対策、EDRは侵入後の動きに気づく仕組み、UTMは事務所の入口を守る機器です。現場に端末を持ち出すことが多い電気工事会社では、UTMだけでは守りきれないため端末側の対策と組み合わせ、警告に誰が対応するかまで決めておくことが大切です。
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出典・参考
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(2026年3月27日)https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html
- IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス制度」https://www.ipa.go.jp/security/sme/otasuketai-about.html
- IPA セキュリティセンター「企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策」(2026年8月3日)https://www.ipa.go.jp/security/support/rcu1hd0000019vmo-att/20260803_1.pdf
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