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建設現場の熱中症対策|電気工事の天井裏作業に注意

建設現場の熱中症対策|電気工事の天井裏作業に注意

電気工事は熱中症リスクが特に高い

建設業全体で熱中症による死傷者は毎年多数発生していますが、電気工事はその中でも特に熱中症リスクが高い業種です。理由は明確で、電気工事特有の作業環境が関係しています。

電気工事で熱中症リスクが高い作業場所

作業場所温度上昇の原因推定温度
天井裏(小屋裏)日射による屋根面の加熱、換気不良外気温+10〜20℃
電気室・変電室変圧器・遮断器等の発熱常時30〜40℃以上
EPS(電気シャフト)密閉空間、ケーブルの発熱外気温+5〜15℃
屋上直射日光、コンクリートの輻射熱体感温度50℃超も
ピット・マンホール換気不良、地熱湿度が高く発汗機能が低下
分電盤設置スペース狭所・通気不良局所的な高温

外気温が30℃であっても、天井裏では50℃近くに達することがあります。この環境で保護具を着用して作業することが、いかに過酷かを理解する必要があります。

熱中症の症状と重症度分類

熱中症は重症度によって3段階に分類されます。

分類症状対応
I度(軽症)めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉の痙攣(こむら返り)涼しい場所で休息、水分・塩分の補給
II度(中等症)頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、集中力の低下医療機関の受診が必要
III度(重症)意識障害、けいれん、高体温(40℃以上)、臓器障害直ちに救急搬送。命に関わる

特に危険なサイン: 「汗が出なくなった」「受け答えがおかしい」「真っ直ぐ歩けない」。これらの症状が出た場合は即座に作業を中止し、救急車を呼んでください。

WBGT(暑さ指数)による管理

WBGTとは

WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、気温だけでなく湿度と輻射熱を考慮した暑さの指標です。厚生労働省は、熱中症予防のためにWBGT値に基づく作業管理を推奨しています。

WBGT基準値

身体作業強度暑熱順化者のWBGT基準値暑熱非順化者のWBGT基準値
軽い作業(配線の接続等)31℃28℃
中程度の作業(配管敷設等)28℃25℃
重い作業(ケーブル引き入れ等)26℃22℃
極めて重い作業(重量物の人力搬入等)25℃20℃

暑熱順化者とは、暑さに体が慣れた人(7日間以上暑熱環境で作業した人)のことです。梅雨明け直後や休み明けは暑熱順化していないため、非順化者の基準値を適用します。

WBGT測定のポイント

  • 測定場所は実際の作業場所で行う(事務所の値では意味がない)
  • 天井裏や電気室など密閉空間は個別に測定する
  • 1日複数回測定する(午後が最も高くなる傾向)
  • 携帯型WBGT計を現場に常備する(数千円から購入可能)

具体的な熱中症予防策

作業環境の改善

対策具体的な実施内容
換気の確保天井裏・密閉空間にスポットクーラーや送風機を設置
遮熱対策屋上作業時は遮熱シートやテントを設置
休憩場所の確保エアコンが効いた休憩所を確保(現場事務所等)
WBGT表示現場の見やすい場所にWBGT値と対策を掲示

作業管理

対策具体的な実施内容
作業時間の制限天井裏作業は連続30分以内、休憩15分以上を厳守
作業時間帯の調整最も暑い時間帯(13〜15時)の天井裏作業を避ける
交代制の導入複数人で交代しながら作業する
単独作業の禁止密閉空間での単独作業は禁止し、必ず見張りを配置
朝礼での体調確認前夜の睡眠状況、体調不良の有無を確認

水分・塩分の補給

補給のルール内容
補給頻度20〜30分ごとに1回(のどが渇く前に飲む)
1回の量コップ1〜2杯(200〜400ml)
飲み物0.1〜0.2%の食塩水、経口補水液、スポーツドリンク
避けるべき飲み物カフェイン飲料(利尿作用)、アルコール
設置場所作業場所からすぐに手が届く場所にクーラーボックスを設置

身体の冷却

冷却方法効果
冷却ベスト・ファン付き作業服体温の上昇を抑制(電気工事ではファン付き作業服が普及)
冷却タオル(首元に巻く)頸動脈を冷やして体温を下げる
保冷剤(脇・首・太もも付け根)太い血管を冷やして効率的に体温を下げる
ミストシャワー休憩所に設置して気化熱で冷却

健康管理

確認項目内容
前日の飲酒過度な飲酒は脱水を促進するため注意喚起
睡眠不足睡眠不足は体温調節機能を低下させる
持病・服薬利尿剤、降圧剤等は熱中症リスクを高める
暑熱順化の状況休み明け・新規入場者は特に注意

緊急時の対応手順

熱中症が疑われる症状が出た場合の対応手順です。

I度(軽症)の場合

  1. 作業を中止し、涼しい場所(エアコンのある部屋、日陰)に移動
  2. 衣服をゆるめ、体を冷やす(首・脇・太もも付け根)
  3. 水分・塩分を補給する(経口補水液が最適)
  4. 30分以内に改善しない場合は医療機関を受診

II度(中等症)以上の場合

  1. 直ちに作業を中止し、涼しい場所に移動
  2. 119番に通報する
  3. 衣服をゆるめ、全身に水をかけて風を送り体を冷やす
  4. 意識がはっきりしている場合は水分を補給する
  5. 意識がない場合は水分を飲ませない(誤嚥の危険)
  6. 嘔吐がある場合は横向きに寝かせる(窒息防止)
  7. 救急隊に引き渡すまで冷却を継続する

天井裏・密閉空間での発症時の注意

天井裏や密閉空間で熱中症が発症した場合、搬出作業自体が困難です。

  • 意識を失った作業者を狭い天井裏から安全に下ろす手順を事前に決めておく
  • 搬出経路を確保しておく(天井点検口の位置、開口可能な場所の確認)
  • 担架が入らない場合のロープによる搬出方法を訓練しておく
  • 墜落防止措置を講じたうえで救出活動を行う(二次災害の防止)

法的要件

事業者の義務

厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱」に基づき、事業者には以下の義務があります。

義務内容
WBGT値の測定暑熱環境下での作業場所でWBGT値を把握する
作業環境管理休憩場所の確保、水分・塩分の準備
作業管理作業時間の短縮、休憩時間の確保
健康管理作業者の健康状態の確認
労働衛生教育熱中症の症状・予防法・応急措置の教育
救急処置応急処置の体制整備

安全衛生計画への記載

安全衛生計画書には、熱中症対策を具体的に記載します。記載すべき事項は以下のとおりです。

  • WBGT値の測定方法と頻度
  • 作業時間制限の基準
  • 水分・塩分補給の方法
  • 休憩場所の確保状況
  • 緊急時の対応手順
  • 教育・訓練の実施計画

まとめ

熱中症は「暑いから気をつけよう」という精神論では防げません。WBGT値に基づく客観的な作業管理、天井裏・密閉空間の個別測定、計画的な水分補給と休憩のルール化が必要です。

特に電気工事は天井裏や電気室など、一般的な建設作業よりも過酷な温熱環境で作業することが多い業種です。「慣れているから大丈夫」ではなく、数値で管理し、ルールで守る。それが、真夏の現場で全員を無事に帰す唯一の方法です。

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