施工計画書の安全衛生計画 書き方のポイント【電気工事】
安全衛生計画が施工計画書の中で最も重視される理由
施工計画書の中で、発注者や監督員が最も注目するのが安全衛生計画です。工事成績評定の「安全対策」項目は配点が高く、記載内容の具体性と実効性が問われます。
特に電気設備工事は、感電・墜落・酸欠という3つの重大リスクを抱える業種です。「安全に留意する」という抽象的な記述ではなく、「誰が」「いつ」「何を」「どのように」行うかを具体的に記載することが求められます。
なお、安全管理計画の概要は「電気設備工事の施工計画書 作成ガイド」で紹介しています。本記事では、各リスクへの対策をさらに詳しく掘り下げます。
安全衛生管理体制の記載
安全衛生組織図
現場の安全衛生管理体制を組織図で示します。
| 役職 | 担当者 | 主な職務 |
|---|---|---|
| 統括安全衛生責任者 | 元請の現場所長 | 安全衛生管理の統括(特定元方事業者の場合) |
| 安全衛生責任者 | 下請の現場責任者 | 統括安全衛生責任者との連絡調整 |
| 安全衛生推進者 | 各社から選任 | 日常の安全衛生活動の推進 |
| 作業主任者 | 有資格者 | 酸欠危険作業など法定作業の管理 |
安全衛生活動計画
月間・週間の安全衛生活動を具体的にスケジュール化します。
| 活動項目 | 頻度 | 実施者 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 安全朝礼 | 毎日 | 全作業員 | 当日の作業内容・危険箇所の共有 |
| KY活動 | 毎日(作業前) | 各班 | 作業ごとの危険予知と対策決定 |
| 安全パトロール | 週1回 | 安全衛生推進者 | 現場巡視と是正指示 |
| 安全衛生協議会 | 月1回 | 元請+下請全社 | 月間の安全目標・事故事例の共有 |
| 安全教育 | 月1回 | 安全衛生推進者 | テーマ別の安全教育 |
リスクアセスメントの実施と記載
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントは、作業に潜む危険性を事前に洗い出し、リスクの大きさを評価し、対策の優先順位を決定する手法です。施工計画書にリスクアセスメントの結果を記載することで、安全対策の根拠を明確にできます。
リスクの評価方法
リスクの大きさ = 重篤度 × 可能性(頻度)
| 重篤度 | レベル | 内容 |
|---|---|---|
| 致命的 | 4 | 死亡・重度の後遺障害 |
| 重大 | 3 | 休業1ヶ月以上の傷害 |
| 中程度 | 2 | 休業1ヶ月未満の傷害 |
| 軽微 | 1 | 不休災害、ヒヤリハット |
| 可能性 | レベル | 内容 |
|---|---|---|
| 高い | 4 | 日常的に発生する可能性 |
| やや高い | 3 | 時々発生する可能性 |
| やや低い | 2 | まれに発生する可能性 |
| 低い | 1 | ほとんど発生しない |
電気設備工事のリスクアセスメント例
| 作業内容 | 危険性 | 重篤度 | 可能性 | リスク値 | 対策 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高圧盤内の結線作業 | 感電 | 4 | 2 | 8 | 停電作業、検電確認、短絡接地 |
| 天井裏での配管作業 | 墜落 | 3 | 3 | 9 | 足場設置、フルハーネス使用 |
| キュービクル搬入 | 挟まれ | 3 | 2 | 6 | クレーン使用、介錯ロープ、退避位置の確保 |
| 地下ピットでの接地工事 | 酸欠 | 4 | 2 | 8 | 酸素濃度測定、換気、監視人配置 |
| ケーブルラック上での延線 | 墜落 | 3 | 3 | 9 | 高所作業車使用、フルハーネス |
| 電動工具の使用 | 感電・切創 | 2 | 3 | 6 | 漏電遮断器使用、保護具着用 |
リスク値が8以上の作業は「重点管理作業」として、個別の作業手順書を作成し、作業前のTBM(ツールボックスミーティング)で全員に周知します。
電気工事特有の安全対策
1. 感電防止対策
感電は電気工事における最大のリスクです。以下の項目を具体的に記載します。
停電作業の5つの安全ルール
- 開路: 該当する電路の開閉器を開放する
- 検電: 検電器で無電圧を確認する
- 短絡接地: 短絡接地器具を取り付ける
- 表示: 「投入禁止」の札を掲示する
- 区画: 作業範囲を明示し、関係者以外の立入を禁止する
活線近接作業の離隔距離
| 電圧区分 | 離隔距離 |
|---|---|
| 低圧(600V以下) | 接触しない距離 |
| 高圧(600V超〜7,000V) | 60cm以上 |
| 特別高圧(7,000V超) | 電圧に応じて120cm〜 |
2. 墜落防止対策
電気設備工事では、天井裏・EPS(電気シャフト)・外壁面など、高所作業が頻繁に発生します。
2m以上の高所作業における対策
- 足場・作業床の設置を最優先で検討
- 足場設置が困難な場合はフルハーネス型墜落制止用器具を使用
- 脚立の使用は原則として天板高さ2m未満に限定
- 開口部には手すり・覆いを設置し、注意喚起の表示
3. 酸素欠乏・硫化水素中毒防止対策
地下ピット、マンホール、密閉されたEPSなどで作業する場合の対策を記載します。
- 作業開始前に酸素濃度を測定(18%以上を確認)
- 硫化水素の測定(10ppm以下を確認)
- 換気装置の設置と稼働確認
- 監視人の配置(作業者と別の人物)
- 空気呼吸器・送気マスクの準備
- 酸素欠乏危険作業主任者の選任と現場常駐
4. 重量物取扱い対策
受変電設備(キュービクル)や大型分電盤の搬入・据付時の対策です。
- 搬入経路の事前調査(耐荷重・通路幅・段差確認)
- クレーン・フォークリフトの使用計画
- 玉掛け作業は有資格者が実施
- 介錯ロープの使用と退避位置の明確化
- 据付時の転倒防止措置
5. 第三者災害防止対策
稼働中の建物での改修工事など、一般の建物利用者がいる環境での安全対策です。
- 作業区画のバリケード設置と注意表示
- 粉塵・騒音の影響を最小限にする養生
- 停電範囲と時間の事前通知
- 通路の確保と案内表示
安全衛生教育計画の記載
実施すべき教育の種類
| 教育の種類 | 対象者 | 実施時期 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|
| 雇入れ時教育 | 新規雇用者 | 雇入れ時 | 安衛法第59条 |
| 新規入場者教育 | 現場初入場者 | 入場時 | 安衛法第59条 |
| 作業内容変更時教育 | 作業変更者 | 変更時 | 安衛法第59条 |
| 特別教育 | 法定作業従事者 | 作業開始前 | 安衛法第59条3項 |
| 職長・安全衛生責任者教育 | 新任職長 | 就任時 | 安衛法第60条 |
電気工事で必要な特別教育
- 低圧電気取扱い業務
- 高圧・特別高圧電気取扱い業務
- フルハーネス型墜落制止用器具使用業務
- 酸素欠乏危険作業(第2種)
- アーク溶接作業
- クレーン操作(つり上げ荷重5t未満)
緊急時対応計画
記載すべき項目
- 緊急連絡先一覧: 消防・警察・救急・病院・発注者・会社
- 感電時の救急処置: 電源遮断 → 救出 → 心肺蘇生 → AED使用 → 救急要請
- 火災時の対応: 初期消火 → 避難誘導 → 消防への通報
- 避難経路: 現場の避難経路図を添付
AED設置計画
現場にAEDを設置する場合は、設置場所と使用方法の周知計画を記載します。感電事故は心室細動を引き起こす可能性が高く、AEDの使用が生死を分けることがあります。
まとめ
安全衛生計画は、リスクアセスメントに基づいて「なぜその対策が必要か」の根拠を示し、「誰が・いつ・何をするか」を具体的に記載することが重要です。
特に電気設備工事では、感電・墜落・酸欠という重大リスクへの対策を、停電作業の手順や離隔距離といった具体的な数値とともに示すことで、実効性のある安全衛生計画になります。
