施工計画書に添付する工程表の作り方【電気工事】
電気工事の工程表が難しい理由
電気設備工事の工程表は、建築や設備(空調・衛生)の工程に従属する部分が多いのが特徴です。壁ができなければボックスを付けられない、天井を塞ぐ前に配管を終わらせなければならない。他工種の進捗に左右されるため、電気工事だけの都合で工程を組むことができません。
だからこそ、他工種との取り合いを正確に把握し、マイルストーンを明確にした工程表が重要になります。
工程表の種類と使い分け
バーチャート工程表
最も一般的な工程表です。横軸に日付、縦軸に工種を配置し、各作業の期間を棒(バー)で示します。
メリット
- 一目で全体の流れが分かる
- 作成が比較的簡単
- 関係者への説明がしやすい
デメリット
- 作業間の依存関係が見えにくい
- クリティカルパスが明確にならない
適する場面: 公共工事の施工計画書に添付する全体工程表、月間工程表
ネットワーク工程表
作業間の依存関係を矢線(アロー)で結び、クリティカルパスを明確にする工程表です。
メリット
- 作業の前後関係が明確
- クリティカルパス(遅延が許されない経路)が分かる
- 工程短縮の検討に適している
デメリット
- 作成に専門知識が必要
- 関係者への説明に工夫が必要
適する場面: 大規模工事、工期が厳しい工事、複数工種の調整が複雑な工事
実務上の使い分け
公共工事の施工計画書では、通常全体工程表をバーチャートで作成し、必要に応じてネットワーク工程表を補足資料として添付するのが一般的です。
電気設備工事の工程表作成手順
ステップ1: 作業の洗い出し
電気設備工事の主な作業を工種別に洗い出します。
受変電設備
- 基礎工事(コンクリート基礎)
- 機器搬入・据付
- ケーブル敷設(高圧)
- 結線・端末処理
- 各種試験(耐圧・保護協調)
- 受電
幹線・動力設備
- ケーブルラック敷設
- ケーブル延線
- 分電盤据付
- 結線
- 絶縁抵抗測定
電灯・コンセント設備
- 配管・配線(躯体工事中)
- 配管・配線(内装工事中)
- 器具取付
- 照度測定
防災設備
- 感知器配管・配線
- 機器取付
- 総合試験
- 消防検査
ステップ2: 他工種との取り合い整理
電気工事の工程は、以下の建築工程に強く依存します。
| 建築工程 | 電気工事の関連作業 | 注意点 |
|---|---|---|
| 躯体工事(型枠) | スリーブ入れ、インサート取付 | 型枠を組む前に完了必須 |
| 躯体工事(配筋) | 埋込配管 | 配筋と干渉しないルート設計 |
| 躯体コンクリート打設 | 打設前の最終確認 | 打設後は修正不可 |
| 外壁工事 | 外壁貫通部の処理 | 防水処理との調整 |
| 天井下地工事 | 天井内配管・配線 | 天井ボードを張る前に完了必須 |
| 壁ボード工事 | 壁内配管・ボックス取付 | ボードを張る前に完了必須 |
| 内装仕上工事 | 器具取付 | 仕上材の汚損防止 |
ステップ3: マイルストーンの設定
工程表には、以下のマイルストーン(重要な節目)を明示します。
| マイルストーン | 意味 | 前提条件 |
|---|---|---|
| スリーブ入れ完了 | 躯体への貫通スリーブ設置完了 | 設計図確定・他設備調整済み |
| 天井内配管完了 | 天井ボード張り前の配管完了 | 空調ダクトとの調整済み |
| 受電 | 電力会社からの受電開始 | 受変電設備の試験完了 |
| 消防検査 | 防災設備の消防署検査 | 全防災機器の動作確認完了 |
| 竣工検査 | 発注者の最終検査 | 全設備の完了・試運転完了 |
ステップ4: 所要日数の算出
各作業の所要日数は、以下の要素から算出します。
所要日数 = 作業量 ÷ (1日あたりの施工能力 × 投入人数)
算出例: ケーブルラック敷設
- 作業量: 200m
- 1日あたりの施工能力: 2人で30m/日
- 投入人数: 2人
- 所要日数: 200m ÷ 30m/日 ≒ 7日
これに余裕日数(バッファ) を加算します。天候・資材遅延・他工種の遅れなどを考慮し、通常10〜20%の余裕を見込みます。
ステップ5: 工程表の作成とレビュー
上記の情報をもとに工程表を作成し、以下の観点でレビューします。
レビュー観点
- 他工種との取り合い日程に無理がないか
- 技術者・作業員の配置に重複がないか
- 材料・機器の納期に間に合う発注時期になっているか
- 法定の届出・検査の日程が確保されているか
- 天候リスク(梅雨・台風シーズン)を考慮しているか
工程管理のコツ
フロート(余裕時間)の管理
ネットワーク工程表では、各作業のフロート(遅延が許される日数)が計算できます。フロートがゼロの作業がクリティカルパスであり、この経路上の作業が遅れると全体工期に影響します。
電気工事のクリティカルパスは、多くの場合「受電」に集約されます。受電日は電力会社との調整で決まるため、受電日から逆算して工程を組むのが基本です。
週間工程会議の活用
建築の週間工程会議に参加し、以下を確認・調整します。
- 翌週の建築工程と電気工事の取り合い確認
- 天井閉塞・壁閉塞のタイミング確認
- 他設備(空調・衛生)との作業エリアの調整
- 遅延が発生している場合の挽回計画
工程遅延時の対処
工程が遅れた場合の挽回方法を施工計画書に記載しておくと、実際に遅延が発生した際の対応がスムーズです。
| 挽回方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 人員の増員 | 作業員の追加投入 | 安全管理の体制も合わせて強化 |
| 作業時間の延長 | 残業・休日出勤 | 36協定の範囲内、2024年問題に注意 |
| 工法の変更 | プレハブ加工の活用等 | 品質が同等であることの確認 |
| 作業順序の変更 | 並行作業の実施 | 安全面の確認、干渉の有無 |
まとめ
電気設備工事の工程表は、他工種との取り合いを正確に把握し、受電日から逆算して組み立てることが基本です。バーチャート工程表で全体像を示しつつ、マイルストーンと取り合いポイントを明確にすることで、実行可能な工程計画になります。
工程表は「作って終わり」ではなく、週間工程会議で継続的に更新し、遅延の兆候を早期に発見・対処することが重要です。
