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自動火災報知設備の施工と注意点【電気工事業者向け】
自動火災報知設備の概要
自動火災報知設備(自火報)は、火災の発生を自動的に感知し、建物内の人々に警報を発する防災設備です。消防法施行令第21条により、一定規模以上の建築物には設置が義務付けられています。
電気工事業者にとって、自火報の施工は一般的な電気工事とは異なる基準や法規制が適用されるため、消防法および関連告示の理解が欠かせません。
設置が義務付けられる建物
| 建物の用途 | 設置基準(延べ面積等) |
|---|---|
| 劇場・映画館 | 300m²以上 |
| 飲食店・物品販売店 | 300m²以上 |
| ホテル・旅館 | 300m²以上 |
| 病院・診療所 | 300m²以上(入院施設あり:すべて) |
| 共同住宅 | 500m²以上 |
| 事務所・工場 | 500m²以上 |
| 倉庫 | 500m²以上 |
| 地下・無窓階 | 300m²以上(用途問わず) |
| 11階以上の階 | すべて |
上記は概要であり、用途の複合や特殊な条件によって基準が変わるため、所轄消防署への事前相談が重要です。
感知器の種類と選定
感知器の種別
| 種別 | 検知原理 | 主な設置場所 |
|---|---|---|
| 差動式スポット型 | 急激な温度上昇を検知 | 事務所、居室、廊下 |
| 定温式スポット型 | 一定温度以上を検知 | 厨房、ボイラー室 |
| 煙感知器(光電式スポット型) | 煙の粒子を検知 | 階段、エレベーター前、廊下 |
| 煙感知器(光電式分離型) | 送光部と受光部間の煙を検知 | 天井が高い空間(体育館等) |
| 炎感知器 | 炎の赤外線・紫外線を検知 | 天井が非常に高い場所、屋外 |
感知器の選定基準
| 設置場所の条件 | 推奨する感知器 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般居室・事務室 | 差動式スポット型 | 通常の温度変化では動作せず、火災時の急激な温度変化で動作 |
| 厨房・ボイラー室 | 定温式スポット型(特種または1種) | 日常的に高温になる場所で誤報を防止 |
| 階段・EV前室 | 煙感知器(2種または3種) | 法令で煙感知器の設置が義務付けられている場所 |
| 天井高15m以上 | 光電式分離型・炎感知器 | スポット型では感知が困難な高天井に対応 |
| 駐車場 | 差動式または炎感知器 | 排気ガスによる煙感知器の誤報を防止 |
感知器の設置基準
取付位置の基準
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 天井面からの距離 | 感知器の下端が天井面から30cm以内 |
| 壁からの距離 | 壁面から60cm以上離す |
| エアコン吹出口からの距離 | 1.5m以上離す |
| 照明器具からの距離 | 熱の影響を受けない距離 |
| 梁からの距離 | 梁等で区画される場合は各区画に設置 |
感知区域と設置個数
感知器1個あたりの警戒面積は、感知器の種別と天井高によって異なります。
差動式スポット型の場合:
| 天井高 | 1種(警戒面積) | 2種(警戒面積) |
|---|---|---|
| 4m未満 | 90m² | 70m² |
| 4m以上8m未満 | 45m² | 35m² |
煙感知器(光電式スポット型)の場合:
| 天井高 | 2種(警戒面積) | 3種(警戒面積) |
|---|---|---|
| 4m未満 | 150m² | 50m² |
| 4m以上15m未満 | 75m² | — |
配線の施工方法
配線方式
自火報の配線は送り配線(ループ配線)が基本です。
| 配線方式 | 特徴 |
|---|---|
| 送り配線 | 受信機から各感知器を順番に接続。断線監視が可能 |
| スター配線 | 各感知器を個別に受信機に接続。P型には不向き |
使用電線
| 配線の種類 | 使用電線 | 備考 |
|---|---|---|
| 感知器回路 | 耐熱電線(HP)0.9mm以上 | 一般部分はAE線でも可 |
| ベル回路 | 耐熱電線(HP)1.2mm以上 | 音響装置への配線 |
| 電源回路 | 600V耐熱ケーブル | 受信機への電源供給 |
| 表示灯回路 | 耐熱電線 | 発信機の表示灯用 |
耐火・耐熱ケーブルの選定については、電線・ケーブルの種類と選定方法も参照してください。
配線の施工基準
| 施工項目 | 基準 |
|---|---|
| 配管 | 金属管またはPF管を使用 |
| ボックス内の処理 | 端子接続(はんだ付けまたは圧着) |
| 電線の色分け | 共通線(白)、表示線(赤)など色分けして識別 |
| 終端抵抗 | 最終感知器の端子に終端抵抗を接続(断線監視用) |
| 他の配線との離隔 | 強電配線とは15cm以上離すか、金属管で遮蔽 |
受信機の設置
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 設置場所 | 防災センター、管理人室、守衛室など常時人がいる場所 |
| 設置高さ | 操作面が床上0.8m〜1.5m |
| 操作スペース | 前面に1m以上の空間を確保 |
| 予備電源 | 監視状態で60分+非常警報10分以上の蓄電池を内蔵 |
| 回線数 | 警戒区域数+予備(10%以上または5回線以上) |
施工時の注意点
よくある不備と対策
| 不備内容 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 感知器の未設置区画がある | 間仕切り変更の未反映 | 竣工前に間仕切り図面と照合 |
| エアコン吹出口近くの感知器 | 空調図面の未確認 | 空調設備図と照合し離隔を確保 |
| 終端抵抗の付け忘れ | 作業忘れ | 回路ごとにチェックリストで確認 |
| 配線の断線・短絡 | 配管内での被覆損傷 | 管端処理の徹底、通線後に回路試験 |
| 誤報の多発 | 感知器種別の選定ミス | 設置環境に適した種別を選定 |
消防検査への対応
竣工前の消防検査では、以下の項目が重点的に確認されます。
| 検査項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 感知器の設置状況 | 種別・個数・位置が設計図面と一致しているか |
| 配線の施工状態 | 耐熱電線の使用、配管の種類が適切か |
| 受信機の動作試験 | 各回線の火災信号が正常に受信されるか |
| 音響装置の動作 | ベル・サイレンの鳴動と音圧の確認 |
| 連動設備の動作 | 防火扉、防排煙設備との連動確認 |
| 竣工図書の確認 | 設計図面、試験成績書、取扱説明書の提出 |
消防検査は使用開始前に必ず受ける必要があり、不備があった場合は是正後に再検査となります。
まとめ
自動火災報知設備の施工は、消防法に基づく設置基準と感知器の選定、配線の施工方法を正確に理解することが重要です。誤った施工は誤報の原因になるだけでなく、火災時に正常に機能しないという重大な事態を招きかねません。
感電事故の防止対策と同様に、人命に直結する工事として確実な施工品質を確保しましょう。施工完了後は施工計画書に記載した試験計画に基づき、全回路の動作確認を行うことが不可欠です。
