病院・医療施設の電気設備工事|特殊要件と注意点
病院電気設備の特殊性
病院・医療施設の電気設備は人命に直結するため、一般建築よりも高い信頼性と安全性が求められます。JIS T 1022「病院電気設備の安全基準」に準拠した設計・施工が必須です。
病院電気設備の特殊要件は以下のとおりです。
| 要件 | 内容 | 根拠規格 |
|---|---|---|
| 医用接地 | 等電位化・保護接地 | JIS T 1022 |
| 非常電源 | 一般非常・特別非常・瞬時特別非常 | JIS T 1022 |
| 非接地配電方式 | 手術室等での絶縁変圧器使用 | JIS T 1022 |
| EMC対策 | 医療機器への電磁干渉防止 | IEC 60601 |
医用接地と非接地配電方式
医用接地は患者が電撃を受けることを防止するための接地方式です。手術室やICUなどの生体に電極を接続する区域では、医用接地端子と保護接地を設け、等電位ボンディングを行います。
手術室では非接地配電方式(IT系統)を採用します。絶縁変圧器を介して電源を供給し、1線地絡が発生しても回路が遮断されず、手術中の電力供給が途切れない設計とします。絶縁監視装置を設置し、絶縁低下を検知した場合は警報を発して保守員に通知します。
接地線の色分けは一般接地が緑、医用接地が緑に黄のストライプとし、他の配線と明確に区別します。
非常電源システムの設計
病院の非常電源は3種類に分類されます。
一般非常電源は消防負荷に電力を供給し、40秒以内の始動が求められます。特別非常電源は医療機器に電力を供給し、10秒以内の切替が必要です。瞬時特別非常電源は手術室照明やICUの生命維持装置に供給し、0.5秒以内の切替が求められるため、UPS(無停電電源装置)で対応します。
非常用発電機と蓄電池設備、UPSを組み合わせた総合的な非常電源システムの設計が必要であり、各系統の負荷容量と切替時間を正確に設計することが重要です。
手術室の電気設備
手術室は、病院の中でも電気設備の要求が最も厳しい部屋です。停電と感電の両方を、通常の病室より高い水準で防ぐ必要があります。
求められる要素
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 非接地配線方式 | 1線地絡が起きても機器が止まらないようにする。絶縁監視装置で漏電を監視する |
| 医用接地 | 手術台まわりの金属部を等電位に保ち、微小な電位差による事故を防ぐ |
| 無停電電源 | 瞬時の停電も許されない機器へ、無瞬断で電力を供給する |
| 医用コンセント | 一般用と区別した表示。系統ごとに色分けして誤接続を防ぐ |
| 照明 | 無影灯と室内照明を別系統にする |
非接地配線方式(アイソレーション)は、漏電しても即座に遮断しないのが要点です。一般の回路のように漏電遮断器で切ってしまうと、手術中に機器が止まります。代わりに絶縁監視装置で警報を出し、手術を続けながら対処する設計にします。
病院の非常用電源の基準
非常用電源は用途によって求められる時間と切替速度が異なります。設計時は、どの負荷をどの電源につなぐかの仕分けが最初の作業になります。
| 区分 | 切替時間の目安 | つなぐ負荷の例 |
|---|---|---|
| 一般非常電源 | 40秒以内 | 一般照明、空調、エレベーター |
| 特別非常電源 | 10秒以内 | 手術室の照明、重要な医療機器 |
| 瞬時特別非常電源 | 無瞬断 | 生命維持装置、サーバー、手術室の一部機器 |
無瞬断の部分は無停電電源装置(UPS)で受け、その後段を発電機がバックアップする二段構えが一般的です。発電機だけでは起動までに時間がかかり、瞬断が生じます。
設計時に確認すること
- 発電機の連続運転時間(燃料備蓄で何時間持つか。災害時の想定と合っているか)
- 負荷の仕分けが実態と合っているか(後から増えた機器が一般電源につながっていないか)
- 定期的な負荷試験の実施体制
- 受変電設備の二重化の要否
具体的な基準は建物の規模・診療科・地域の指導で変わるため、所轄消防と保健所への事前相談を設計の初期に行ってください。後段で条件が判明すると、盤や幹線の設計をやり直すことになります。
まとめ
病院の電気設備工事は最高レベルの安全性が求められる分野です。非常用発電機の設置工事や接地工事の種類、停電作業の安全対策もあわせて参照してください。
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