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電気工事の見積書 書き方と単価設定のポイント

電気工事の見積書 書き方と単価設定のポイント

電気工事の見積が難しい理由

電気設備工事の見積は、他の建設工種と比べて複雑さが際立っています。その理由は以下の3つです。

  1. 使用する材料の種類が膨大: ケーブル、配管材、器具、盤類、接続材料…。1つの工事で数百品目に及ぶことも珍しくない
  2. 現場条件による変動が大きい: 新築と改修では同じ作業でも工数が2〜3倍異なる
  3. 他工種との調整が見えにくい: 建築・空調・衛生との取り合いによる手待ち・手戻りのコスト

見積の精度が低いと、受注しても赤字になったり、逆に高すぎて受注できなかったりします。本記事では、電気工事の見積書を正確かつ効率的に作成するためのポイントを解説します。

見積書の基本構成

電気設備工事の見積書は、以下の階層構造で作成するのが一般的です。

全体構成

工事費総括表
├── 直接工事費
│   ├── 電力設備工事
│   │   ├── 受変電設備
│   │   ├── 幹線設備
│   │   ├── 動力設備
│   │   ├── 電灯コンセント設備
│   │   └── 接地設備
│   ├── 通信設備工事
│   │   ├── 電話設備
│   │   ├── LAN設備
│   │   └── TV共聴設備
│   └── 防災設備工事
│       ├── 自動火災報知設備
│       └── 非常照明設備
├── 共通仮設費
├── 現場管理費
└── 一般管理費等

明細の記載項目

各工種の明細には、以下の項目を記載します。

項目記載内容
名称材料名・作業名CVT38sq-3C
規格サイズ・仕様600V CVTケーブル
数量必要数量150m
単位計上単位m
材料単価1単位あたりの材料費850円/m
労務単価1単位あたりの労務費320円/m
単価計材料単価+労務単価1,170円/m
金額数量×単価計175,500円

材料費の算出方法

数量の拾い出し

図面から正確に数量を拾い出すことが、見積精度の第一歩です。

ケーブル類の拾い出し

  • 図面上のルート長を計測
  • 垂直部分(立ち上がり・立ち下がり)を加算
  • 余長を加算(端末処理用:片端0.5〜1.0m、盤内引き込み:1.0〜2.0m)
  • ロス率を加算(3〜5%)

配管類の拾い出し

  • 直管の長さ
  • エルボ・コネクタ等の継手数
  • ボックス・プルボックスの個数
  • 支持金物の個数(支持間隔から算出)

器具類の拾い出し

  • 図面に記載された器具の種類と数量
  • 取付金物・アダプタ等の付属品

単価の調査

材料単価は以下の方法で調査します。

  1. 電材商社への見積依頼: 最も正確。2〜3社に見積りを取る
  2. 積算資料の参照: 「建設物価」「積算資料」などの刊行物
  3. メーカーカタログ価格からの掛率計算: 定価×掛率(0.5〜0.7程度)

注意点: 電線・ケーブルは銅価格に連動して変動します。見積時と発注時の時間差による価格変動リスクを考慮し、見積有効期限を明記しましょう。

労務費の算出方法

歩掛りとは

歩掛りとは、「ある作業を1単位行うために必要な人工(にんく)」のことです。電気工事の積算では、この歩掛りが見積精度を大きく左右します。

主要工種の歩掛り目安

工種単位歩掛り目安
金属管配管(露出)10m0.5〜0.8人工
PF管配管(隠蔽)10m0.8〜1.2人工
CVケーブル延線(ラック)100m0.3〜0.5人工
CVケーブル延線(管路)100m0.8〜1.5人工
照明器具取付(直付)10台0.8〜1.5人工
コンセント取付10個0.5〜0.8人工
分電盤取付1面0.5〜1.0人工
接地工事(A種)1箇所1.0〜2.0人工

※上記は目安であり、現場条件によって大きく変動します。自社の実績データを蓄積することが最も重要です。

労務単価の設定

公共工事の場合は、国土交通省が毎年発表する「公共工事設計労務単価」を参考にします。

民間工事の場合は、自社の人件費(給与+社会保険料+福利厚生費)を実稼働日数で割った「実質労務単価」を使用するのが適切です。

諸経費の計算

共通仮設費

現場事務所、仮設電気・水道、安全設備、片付け清掃などの費用です。直接工事費の**3〜8%**が目安です。

現場管理費

現場代理人・監理技術者等の人件費、通信費、交通費、保険料などです。直接工事費+共通仮設費の**15〜25%**が一般的です。

一般管理費等

本社経費、営業経費、利益を含みます。工事原価(直接工事費+共通仮設費+現場管理費)の**10〜20%**が目安です。

利益を確保する単価設定のコツ

コツ1: 見えないコストを見落とさない

電気工事の見積で赤字になる最大の原因は見落としです。特に以下の項目は漏れやすいので注意しましょう。

  • 搬入・揚重費(エレベーターが使えない場合の階段揚重)
  • 養生費(既存設備の養生、床・壁の養生)
  • 仮設電源の設置費用
  • 残業・休日出勤の割増分
  • 工具の損料(消耗品は意外とコストがかかる)
  • 検査・試験の費用
  • 是正・手直しの予備費

コツ2: 現場条件を必ず確認する

図面だけでは分からない現場条件が、工数に大きく影響します。

  • 改修工事: 既設設備の撤去・養生が必要。新築の1.5〜3倍の工数になることも
  • 高所作業: 足場・高所作業車が必要な場合は別途計上
  • 夜間工事: 割増労務費+照明仮設費
  • 搬入条件: エレベーター制限、階段のみ、クレーン使用など

コツ3: 過去実績との比較

見積の最終チェックとして、過去の類似工事の実績と比較します。

  • ㎡単価: 建物の延床面積あたりの工事費
  • 戸あたり単価: マンションの場合の1戸あたり工事費
  • VA単価: 受変電設備のkVAあたりの単価

大きな乖離がある場合は、見落としや計算ミスの可能性があります。

コツ4: 見積ソフト・AIの活用

材料の拾い出しや単価の検索を手作業で行うと、膨大な時間がかかります。見積ソフトを活用すれば、材料データベースとの連携で単価検索が効率化されます。

また、Patto AIを活用すれば、過去の見積データを学習したAIが数量の妥当性チェックや単価の提案を行い、見積精度の向上と作成時間の短縮を同時に実現できます。

見積書の体裁と提出のポイント

体裁のポイント

  • 表紙に会社名・工事名・見積日・有効期限を明記
  • 内訳は階層構造で見やすく整理
  • 単位・数量・単価・金額の桁を揃える
  • 条件・除外事項を明記(「○○は本見積に含みません」)

提出時の注意

  • 見積有効期限を設定: 材料価格の変動リスクを考慮し、30〜60日程度
  • 別途工事の明記: 範囲外の工事を明確にしておくことで、後のトラブルを防止
  • 数量の根拠を準備: 質疑を受けた際に数量の根拠を説明できるよう、拾い出し図面を保管

まとめ

電気工事の見積は、正確な数量拾い出しと適正な単価設定が基本です。見落としやすいコストを漏れなく計上し、現場条件を反映した現実的な見積を作成することで、利益を確保できる受注につなげましょう。

また、見積データを案件ごとに蓄積し、歩掛りの実績データを充実させることで、見積精度は着実に向上します。地道な積み重ねが、会社の利益体質を強化する最も確実な方法です。

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