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電気工事会社のBCP(事業継続計画)の作り方
BCPとは
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、自然災害や感染症、事故などの緊急事態が発生した際に、事業の中断を最小限に抑え、早期に復旧するための計画書です。
電気工事会社がBCPを策定すべき理由は、主に3つあります。
- 社員と家族の安全を守るため: 災害発生時の対応手順を明確にしておく
- 事業を継続するため: 工事の中断による損害を最小限にする
- 経営上のメリットがあるため: 経審のW点で加点、入札での評価向上
BCPが経審・入札に与える影響
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 経審W点の加点 | BCPの策定と、防災協定の締結で加点対象 |
| 総合評価方式の加点 | 技術提案で防災対応力をアピール可能 |
| 発注者からの信頼 | 災害時に復旧対応できる会社として評価 |
電気工事会社が想定すべきリスク
| リスク | 発生確率 | 影響度 | 電気工事への影響 |
|---|---|---|---|
| 地震 | 中 | 極大 | 現場の損壊、資材の被害、交通遮断 |
| 台風・豪雨 | 高 | 大 | 現場の浸水、停電、通勤不能 |
| 感染症 | 中 | 大 | 作業員の欠勤、現場の一時閉鎖 |
| 火災 | 低 | 大 | 事務所・倉庫の被害、資機材の喪失 |
| サイバー攻撃 | 中 | 中 | データの喪失、業務システムの停止 |
| 主要社員の突然の離脱 | 中 | 中 | 技術者不足、業務の属人化リスク |
BCP策定の5ステップ
ステップ1: 優先業務の特定
災害時に優先して継続(または早期に復旧)すべき業務を特定します。
電気工事会社の優先業務
| 優先度 | 業務 | 理由 |
|---|---|---|
| 最優先 | 従業員の安否確認 | 人命が最優先 |
| 最優先 | 施工中現場の安全確認 | 二次災害の防止 |
| 高 | 発注者・協力会社への連絡 | 工事の状況報告、安全確認 |
| 高 | 応急復旧工事(防災協定) | 地域インフラの復旧支援 |
| 中 | 通常工事の再開判断 | 現場の安全確認後に再開 |
| 低 | 新規入札への参加 | 余裕ができてから |
ステップ2: 緊急連絡体制の構築
災害発生時の連絡体制を、平時から明確にしておきます。
緊急連絡網の構成
社長(災害対策本部長)
├── 管理部門責任者
│ ├── 事務員A → 従業員安否確認の集約
│ └── 事務員B → 発注者・協力会社への連絡
├── 工事部門責任者
│ ├── 現場A 現場代理人 → 現場の安全確認・報告
│ ├── 現場B 現場代理人 → 現場の安全確認・報告
│ └── 現場C 現場代理人 → 現場の安全確認・報告
└── 営業部門責任者
└── 営業担当 → 発注者への状況報告
連絡手段の確保
災害時は通常の電話が繋がりにくくなります。複数の連絡手段を用意します。
| 連絡手段 | 特徴 |
|---|---|
| 災害用伝言ダイヤル(171) | NTTが提供する音声伝言サービス |
| SNS・チャットツール | LINEやSlack(データ通信が使えれば有効) |
| 安否確認サービス | 自動で安否確認メールを配信するサービス |
| 衛星電話 | 通信インフラが壊滅した場合のバックアップ |
ステップ3: 代替手段の確保
業務継続に必要な経営資源(人・モノ・情報・資金)が被害を受けた場合の代替手段を計画します。
| 経営資源 | リスク | 代替手段 |
|---|---|---|
| 人 | 技術者の被災・通勤不能 | 協力会社との相互応援協定、遠方の社員の応援体制 |
| 資機材 | 倉庫の被害、資材の損壊 | 主要資材の分散保管、電材商社との緊急調達協定 |
| 情報 | PC・サーバーの損壊 | クラウドバックアップ、重要書類のデジタル保管 |
| 資金 | 入金遅延、復旧費用の発生 | 経営セーフティ共済への加入、緊急融資の事前相談 |
| 事務所 | 事務所の損壊 | 自宅からのリモートワーク体制、代替事務所の確保 |
ステップ4: 現場の防災対策
施工中の現場における防災対策も、BCPに含めます。
地震発生時の対応
- 作業を即座に中止し、安全な場所に退避
- 作業員の安否確認
- 仮設電源の遮断(漏電・感電防止)
- 現場の被害状況を確認・記録
- 発注者・監督員に報告
- 二次災害防止のための応急処置(崩落危険箇所の養生等)
台風接近時の事前対策
- 48時間前: 気象情報の確認、作業中止の判断基準を周知
- 24時間前: 現場の飛散防止措置(シート・資材の固定)、仮設設備の養生
- 当日: 作業中止、従業員の帰宅指示
ステップ5: BCPの文書化と訓練
BCPは文書化して全社員に周知し、定期的に訓練を行うことで実効性が確保されます。
| 活動 | 頻度 | 内容 |
|---|---|---|
| BCP文書の見直し | 年1回 | 連絡先・体制の更新、計画の改善 |
| 安否確認訓練 | 年1〜2回 | 緊急連絡網の実施テスト |
| 避難訓練 | 年1回 | 事務所・現場での避難経路確認 |
| 机上訓練 | 年1回 | 災害シナリオに基づく対応シミュレーション |
防災協定の締結
BCPの一環として、地元自治体との防災協定を締結することを推奨します。
電気工事会社が提供できる災害時対応
| 対応内容 | 具体例 |
|---|---|
| 応急復旧工事 | 避難所・公共施設の電気設備の応急修理 |
| 仮設電源の設置 | 避難所への発電機設置・仮設配線 |
| 損壊設備の緊急点検 | 公共施設の電気設備の安全確認 |
| 技術者の派遣 | 被災地域への電気工事士の派遣 |
防災協定のメリット
- 経審W点の加点: 防災活動への貢献として評価
- 指名入札での優遇: 地域貢献として指名の判断材料になる
- 地域からの信頼: 災害時に頼りにされる企業としてのブランド構築
防災協定と経審の関係は「経営事項審査(経審)のP点を上げる7つの方法」でも解説しています。
まとめ
BCPは「大企業がやるもの」ではありません。中小の電気工事会社こそ、少数のキーパーソンに業務が集中しており、一人が被災しただけで事業が止まるリスクがあります。
まずは緊急連絡体制の整備と、重要データのクラウドバックアップから始めてください。完璧なBCPを一度に作る必要はありません。できることから着手し、毎年見直して改善していくことが重要です。
